外壁の塗装を考えている際に、見落としてはならない問題があります。

それは「アスベスト」です。

かつて建材として広く使用されていたアスベストは、非常に有害な物質であり、適切に扱わなければ健康に深刻な影響を及ぼす危険性があります。

アスベストがどのようにして外壁に使われているのか、その存在をどうやって確認するのか、そしてもしアスベストが発見された場合にはどう対処すべきか、これらの疑問は多くの人々にとって未知の領域でしょう。

特に、専門的な知識がなくても簡単に確認できる方法や、安全に工事を進めるための対策が気になるところです。
この記事では、外壁に使われている可能性があるアスベストについて、その基本情報から対処法まで、初心者でも分かりやすく解説します。

安心して外壁塗装を進めるために、ぜひ最後までお読みください。

1.外壁などの建材に使われていたアスベストってなに?

外壁などの建材に使われていたアスベストってなに?

1-1.アスベストとは?

アスベストは「石綿(いしわた)」とも呼ばれる天然の鉱物繊維で、綿のような形状をしています。
この繊維は非常に細かく、加工がしやすいため、かつては建材に広く使われていました。

具体的には、天井や屋根、そして外壁など、家のさまざまな部分に使用されていたのです。
アスベストはその優れた特性から「奇跡の鉱物」「夢の材料」とも呼ばれていました。

1-2.なぜ外壁に使われたの?

アスベストは耐火性や耐久性、そして防音性に優れているため、外壁などの建材として非常に適していました。
また、安価で加工が容易だったことから、多くの建物に利用されていたのです。

しかし、これらのメリットの裏には重大なデメリットが隠されていました。
それは、アスベストの繊維が非常に細かく、空気中に飛散しやすいということです。

このため、建材が劣化したり、外壁を解体する際に粉じんとして飛散し、吸い込むと健康被害を引き起こすリスクがあります。

1-3.アスベストの危険性とは?

アスベストの最大の問題は、その粉じんを吸い込んだ際に発生する健康リスクです。
アスベストの繊維は非常に細かく、肺に吸い込まれると人体に刺さり、そこで長期間にわたって留まり続けます。

その結果、肺がん悪性中皮腫肺繊維症といった重篤な疾病を引き起こすことがあるのです。
特に、このような病気は潜伏期間が長く、発症するまでに数十年かかることもあるため、アスベストは「サイレントキラー」とも呼ばれています。

したがって、外壁にアスベストが含まれているかどうかを確認することは、非常に重要です。

1-3-1.アスベストの危険レベルについて

アスベストは、かつては建材として広く使われていましたが、その危険性が明らかになり、使用が禁止されました。

アスベストの危険性は、その粒子の小ささと、肺に溜まりやすい性質にあります。
一度肺に入ると、自然には排出されず、長年の間に肺がんや中皮腫といった恐ろしい病気の原因となることがあります。

アスベストの危険性は、その状態によって3つのレベルに分けられます。

レベル1:発じん性が著しく高い

レベル1に分類されるアスベストは、最も危険な状態にあります。
これは、綿のように柔らかく、解体や取り扱いの際に非常に細かい繊維が飛び散りやすいためです。

このようなアスベストが含まれている建材に触れると、作業員がアスベストの粉じんを吸い込むリスクが非常に高まります。
そのため、除去作業時には防塵マスクや防護服を着用し、さらに飛散防止のための対策が必要です。

具体的には、「封じ込め工法」(薬液を使って飛散を防ぐ)や「囲い込み工法」(板で密閉する)が効果的です。

レベル2:発じん性が高い

レベル2のアスベストは、建材に練り込まれているため、レベル1ほど飛散しやすくはありません。
しかし、密度が低く、崩れると粉塵が発生する可能性が高いです。

これは、シート状のアスベスト素材や断熱材などに見られる状態です。
解体作業時に粉塵が飛散する危険性が高いため、事前に除去や封じ込めを行う必要があります。

封じ込め工法」は、アスベストの飛散を防ぐために溶剤を吹きかける方法で、安全な作業を確保します。

レベル3:発じん性が比較的低い

レベル3に該当するアスベストは、硬い板状に成形されたもので、飛散するリスクがほとんどありません。

例えば、工場で製造された建築材がこれに当たります。
レベル1や2に比べて危険性は低いものの、アスベストであることには変わりないため、解体前には除去作業を行うことが推奨されます。

1-3-2.アスベスト規制について

アスベストの危険性が明らかになるにつれ、規制も段階的に強化されてきました。
特に2021年以降の法改正では、アスベスト含有建材に関する規制が厳しくなり、外壁塗装を行う際にも注意が必要です。

レベル3建材の規制対象化(2021年4月)

以前は規制対象外だったレベル3の建材も、2021年4月以降は規制の対象となりました。
これにより、外壁や屋根に使われているスレートボードやサイディングなども、アスベストが含まれていれば適切な除去作業が求められます。

調査結果の報告義務化(2022年4月)

2022年4月からは、アスベストの事前調査結果を発注元や労働基準監督署に報告することが義務化されました。
すべての建物が対象となるため、アスベストの有無に関わらず、事前調査が必要です。

有資格者による事前調査の義務化(2023年10月)

2023年10月からは、アスベストの事前調査を有資格者が行うことが義務化されました。
これにより、より正確な調査が行われ、施工主様や業者、そして近隣住民への健康リスクが軽減されます。

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2.外壁にアスベストが含まれているかを見分ける方法

では、実際どのようにして、外壁にアスベストが含まれているか調べることができるのでしょうか?
主な方法としては、以下の方法が挙げられます。

2-1.自分でできる簡単な見分け方

自分でできる簡単な見分け方としては、以下の2つが挙げられます。

2-1-1.建物の築年数で判断する

アスベストは、かつては建材として広く使われていたため、古い建物には含まれている可能性があります。

アスベストが最も多く使われていたのは、1970年代から1990年代頃です。
その優れた耐火性や断熱性から、建物の耐久性を高めるために外壁材や屋根材など様々な部分に使用されていました。

しかし、アスベストが健康に悪影響を与えることが明らかになり、2006年に使用が全面禁止されました。
そのため、2006年以前に建てられた建物は、アスベストが含まれている可能性が高いと言えます。

とはいえ、2006年という年が絶対的な基準ではありません。
建物の改修工事などが行われた場合は、その時期によってアスベストが含まれているかどうかが変わることもあります。

2-1-2.外壁材の種類で判断する

アスベストが使われていた可能性が高い外壁材には、以下のようなものがあります。

  • リシン・タイル・スタッコ
    これらは、外壁の仕上げ材として広く使われていました。特に、1970年代から1990年代にかけて多くの建物に使用されています。

  • フィラー
    外壁の下地調整材として使用されていました。リシン・タイル・スタッコと同様に、1970年代から2005年頃まで多く使われていました。

  • 軒天材
    建物の軒裏や軒天井に使用されることが多く、1960年代から2004年頃まで使われていました。

  • 外壁材
    複合金属系サイディングなどが、アスベストを含む外壁材として使用されていました。

これらの外壁材が使われている建物は、アスベストが含まれている可能性が高いと言えます。

外壁材のサイディングボードについて知りたい方は、関連記事「外壁のサイディングボードとは?種類やそれぞれの特徴について解説」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!

2-2.専門業者に依頼するメリット

自分で調べることはできますが、より確実なのは専門業者に調査を依頼することです。
専門業者は、以下の方法でアスベストの有無を調べます。

  • 建物の調査:建物の構造や使用されている建材などを詳しく調査します。
  • サンプル採取:外壁の一部を採取し、顕微鏡でアスベストの有無を調べます。
  • 分析:採取したサンプルを分析し、アスベストの種類や含有量を調べます。

専門業者に依頼するメリットは、以下の通りです。

  • 正確な診断
    専門的な知識と経験を持つため、正確にアスベストの有無を診断できます。

  • 安全な作業
    アスベストの取り扱いは専門的な知識と技術が必要であり、安全対策も重要です。専門業者に依頼することで、安全に作業を進めることができます。

  • 的確なアドバイス
    アスベストが見つかった場合、適切な対策や手続きについてもアドバイスを受けることができます。

3.外壁からアスベストが発見された場合の対処法

建物を調査したところ、アスベストが発見されたという方もいらっしゃるかもしれません。
アスベストは、吸い込むと健康に悪影響を及ぼす恐れがある物質です。

発見された時の不安や、これからどうすればいいのかという疑問をお持ちのことと思います。
ここからは、アスベストが発見された場合の具体的な対処法について解説していきます。

3-1.何もせず放置するのは危険?

アスベストは、かつて建材として広く使用されていた物質ですが、現在ではその健康リスクが問題視されています。
特に、外壁にアスベストが使用されている場合、無視することはできません。

なぜなら、外壁が経年劣化したり、適切なメンテナンスがされなかったりすると、アスベストが飛散し、健康被害を引き起こす可能性があるからです。

アスベストが含まれている建材は、通常、セメントなどで固められた状態で使用されているため、そのままでは飛散するリスクは低いとされています。
しかし、外壁の劣化や、リフォーム・解体作業を行うときに飛散する危険性が高まります。

飛散したアスベストを吸い込むと、肺に蓄積され、長期的には深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
したがって、外壁にアスベストが使用されていることが確認された場合、放置することは危険です。

3-2.安全な除去方法とは?

外壁にアスベストが含まれていることがわかったら、安全な除去方法を検討する必要があります。
アスベストの除去方法には主に次の三つがあります。

3-2-1.外壁の張り替え

アスベストを含む外壁材を完全に取り除き、新しい外壁材に張り替える方法です。
これは、アスベストを根本的に除去するため、最も安全で効果的な方法ですが、費用がかかるのがデメリットです。

外壁材と下地がともに劣化している場合には、この方法が推奨されます。

3-2-2.重ね張り

アスベストが使用されている外壁の上に、新しい外壁材を重ねて張る方法です。
アスベストの飛散リスクを抑える効果がありますが、アスベスト自体は残るため、将来的に解体やリフォームを行う際に再度問題となる可能性があります。

3-2-3.塗装

外壁にアスベストが含まれていても、損傷が激しくなく飛散リスクが低い場合は、塗装によるメンテナンスも一つの選択肢です。
この方法は、他の方法と比較して費用を抑えられる点が魅力ですが、あくまで一時的な対策であり、将来的には根本的な除去が必要になることを理解しておくべきです。

3-3.専門業者に依頼する際の注意点

アスベストの除去作業は、専門的な知識と技術が必要です。
したがって、除去作業を行う際には、必ず専門業者に依頼することが重要です。

アスベストの除去には、特別な許可資格が必要であり、適切な防じん対策が取られているか確認しなければなりません。専門業者を選ぶ際には、注意が必要です。

また、自治体によっては、アスベスト除去に対する補助金が用意されていることがあります。
事前に自治体に確認し、補助金を利用することで、除去費用を抑えることができる場合もあります。

最後に、業者に依頼する際には、複数の業者から見積もりを取り、比較することをおすすめします。
見積もりの内容や作業工程を詳細に確認し、信頼できる業者を選ぶことが、安心してアスベスト除去を進めるための第一歩となります。

外壁塗装の補助金や助成金について知りたい方は、関連記事「外壁塗装の助成金・補助金とは?申請前に知っておきたいポイントを徹底解説」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!

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まとめ

外壁塗装を検討中なら、アスベストの有無を必ず確認しましょう。
アスベストに関する正しい知識を持つことは、健康を守り、安心して外壁塗装を進めるために欠かせません。

家族や周囲の人たちの健康を守るためにも、専門業者に相談し、適切な対策を取ることが大切です。
アスベストに関する情報収集は、安心できる住まいづくりへの第一歩です。

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